メッセージ
西郷で、ごわす。このたびは、おいのような者を、この場に呼んでいただき、心から感謝です。あんたらはわしのことを、とても買いかぶっておられるようですが、おいはそんなたいしたこと、できる人間ではありません。
その後に、今あなたがたがおっしゃられたように、「人間的な魅力がある」とか、「人気がある」とか、そのようなことを申されるのを聞くと、とても恥ずかしいかです。
でも、もしおいが少しでも日本のために、あの時代のためにと思って、頑張ったことが、これから未来の日本をつくられる、いやー、世界をつくられるあんたらのために少しでもなるなら、わたしは少しでも話してみようと思います。
もう、言うべきことは今までの、偉い方がた、たくさん出ちょりますから、おいが話すことはないと思うんだけど、でもひとつ伝えたいことは、どんな政治でも、どんな素晴らしい社会にしたいと思っても、その一人ひとり、作ってる、構成してるメンバーは、みんなあったたかハートを持った人間たちだっちゅうことです。
どんなに世の中を新しくしても、どんなに政治機構を立派にしても、憲法をりっぱにしても、そこに暮らすのは、人情あふれた、人としての幸せを、不幸というものを、いつもかかえちょる人間たちばいうことです。
そこの視点を忘れて、社会だけを改革すればとか、政治倫理だけで、イデオロギーだけで、社会を変えていこうと思っても、肝心な、一人ひとりの人間たちが取り残されてしまうなら、それは少しも一人ひとりの人間たち、人民を幸せにするということにはならんと、おいは思ちょります。
だから、常に周りにいる普通の、当たり前の人たちの幸せばちゅうことを、おいは考えちょりました。
「この人たちがどうしたら幸せになれるか」、「どうしたらこの人たちを、世界の流れの中で、一人前の国の中で、一人前に生きていける・・・。ほかの国に支配されることなく、当たり前の、おてんとさまのもとで暮らせる幸せを、この人たちに与えることができるか」、そういうことばばかり考えちょりました。
おいはあまり頭よくないから、そりゃあいろんなことをやりました。明治維新の政府や、いろんな方たちとの交渉もしたけれども、でもいちばん、おいが考えていたことは、そこです。
薩摩の国ば、知っちょりますでしょうか。あそこは暑い国です。なんにもなかとです。さつまいもくらいしかなくて、いっつもシラス台地の中で、人びとは、わずかな魚と、さつまいもと、ひっからびた土地に生えるまずい米ば、食っちょります。
でも、陽気で、芯のある人たちでした。人情厚か人たちでした。誇り高き人たちでした。その彼らを見て、おいは「なんとかこの薩摩で、人びとが幸せに暮らせる道はないか」と、考えちょりました。
でも、もしほかの藩からの・・・、島津、薩摩というところはやはり、徳川の、江戸の幕府から見たら、遠かったから、ひじょうに自由な気風ありましたけど、でもやはり干渉が強くて、数々の悲劇もあったとです。
ですから、ほんとうの意味で人びとが自由に、素朴に、人間として幸せに生きられる暮らしはないかっちゅうことを、実はおいはずぅーっと、思っとりました。
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